2025.09.19
「広告」と「人事」の交差点
マーケティングの本分は「人たらし」
人気タレントが出演したり、流行アーティストの楽曲が採用されたり。
数多の企業や団体が、あの手この手で「こっち見て!」「これ買って!」と連呼する様は、今も昔もほとんど変わっていません。
実は広告の英訳 advertising / advertisement はラテン語”advertere”を語源とする言葉で、”ad”は「~の方へ」、”vertere”は「向ける」という意味で、合わせて「注意を向ける」という意味になります。そこから、英語の”advertise”は「注意を引く、宣伝する」という意味で使われるようになったということです。
小規模ながら、9年にわたって外資系広告会社のトップとして右往左往しているうちに「広告の仕事と人事の仕事って、ちょっと似てるな」と感じるようになりました。

欲しくなかったものが欲しくなる、何とも思っていなかったものが急に気になりだす…影響力こそ減じてはいるものの、広告の主たる役割は「動機付け」と言い換えることもできるのではないでしょうか。
従業員の幸せ・顧客の幸せ
翻って企業の人事部門の業務と言えば、採用、評価、育成、労務管理、制度設計、福利厚生…と多岐にわたりますが、折からの求人難・離職率の高止まり・転職市場の活性化等々から、人事担当者たちは「マネジメント」から「サービス」に頭を切り替えねばならない時代に入って来ています。
いわば「従業員の幸せ」という感覚。勘のいい人はお気付きかもしれませんが、この傾向は広告・マーケティング業界において、その主体が企業(≒広告主)から「顧客」へシフトしていることと酷似しています。
(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。
公益社団法人日本マーケティング協会プレスレリースより
注1)主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る。
注2)関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている。
注3) 構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる。
これは公益社団法人日本マーケティング協会が2024年に公表した「マーケティングの定義」です。1990年代に策定された古い定義には「競争」という言葉が使われていたのですが、企業主体の目線から、企業市民的な共存共栄を意識したものに変わっています。
時代の流れに敏感であるはずの広告・マーケティング業界よりも、企業の人事の方がこうした潮流に対する順応が早いように感じるのは、やはり人手不足や人材流出が死活問題となっているせいだと思うのですが、多くの企業が具体的な策を講じることができず、思い悩む様子が報道や調査資料から手に取るように伝わってきます。
エンゲージメント強化にアイディアを
これだけ世の中の構造や求職者の意識が変わっているにも関わらず、従来型の研修やプラットフォームに依存しているだけでは状況はなかなか変えられません。これはマス・マーケティングが次第に厳しくなり、個別最適化やデータ・アナリティクスが進む広告・マーケティング業界の状況とよく似ています。
固有の企業風土や慣習は大切なものですが、時代や世代にフィットしていなければ、人材は流出してしまいます。「ウチはこうだから」と頭を押さえつけるようなやり方がもはや通用しないことは明らかですが「変えると言っても、どう変えるのか、どうやって変えるのかがわからない」と考える人も少なくないでしょう。
企業が変わるということだけでなく、従業員に「理解してもらう」べく努める、というのもあり方のひとつです。それこそ、繰り返しになりますが、”advertise”「注意を引く、宣伝する」には、数理的・情緒的両面の創意工夫が必要です。
エンゲージメント強化で、手詰まりやアイディア不足を感じているようでしたら、雑談のつもりでお気軽にご相談下さい。解決の糸口や活路を見出すには格好の話相手になれると思います。